カテゴリー: アクティブサーモグラフィを活用した外壁検査

アクティブサーモグラフィは、熱遷移状態で実施されるサーモグラフィ調査の一種で、通常は冷から熱への遷移(蓄熱状態)で行われますが、その逆(放熱状態)でも実施可能です。

構造物を均一に加熱することで、その構成材料の熱的挙動を観察できます。材料の熱慣性に応じて温度の上昇速度やパターンが異なるため、表面層の下で起きている現象を分析できます。例えば、建築分野では漆喰の下にある状況を観察することが可能です。

アクティブサーモグラフィで検出可能な欠陥

・隠れた亀裂や漆喰の剥離
アクティブサーモグラフィでは、まだ表面化していない亀裂や漆喰の剥離を効果的に特定できます。これらの空間を満たしている空気は熱慣性が非常に低く、急速に加熱されるため、「ホットゾーン」として表示され、その形状から欠陥の輪郭が推測できます。

・構造パターンの観察
煉瓦の配置やその他の構造パターンが視覚化され、詳細な分析が可能になります。

・複合材料の検査
ガラス繊維や炭素繊維などの複合材料では、層間剥離、気泡、接着不良などの欠陥を検出可能です。

・加熱方法
対象物に熱を均一に伝え、観察対象となる現象にコントラストを付けるためには、可能であれば太陽光を利用します。室内作業の場合は赤外線加熱ランプが使用されます。

・高性能な機器の必要性
アクティブサーモグラフィの利点を最大限に活かすためには、熱感度(NETD)の高いサーモグラフィカメラと、観察対象の欠陥を十分なピクセル数で捉えられる高解像度センサーが必要です。

・計画の重要性
アクティブサーモグラフィ調査を成功させるには、詳細な計画が不可欠です。以下は、その例としてArchitecno S.r.l.社のグイド・ロシュ建築士がHikmicro G61サーモグラフィカメラを用いて実施した手順を示しています。

調査内容

調査の目的:外壁の鉄筋被覆剥離の検出
調査場所 :リド・ディ・イエゾロ

【環境条件】
天候: 快晴の昼間
気温: 約12°C
相対湿度(RH): 65%
【使用機器】
機種: Hikmicro G61(標準レンズ付き)
【照度】
調査対象の正面: 一定の照度を維持

実施方法

調査はアクティブモードで実施され、日光の照射中に熱画像を取得しました。調査キャンペーンは、照射開始前のパッシブモードから始まり、同じ外壁に対してアクティブモードで熱変化を分析する形で進められました。

鉄筋被覆の剥離は、最初の太陽熱加熱フェーズで検出されました。この際、剥離部分内の空気の断熱効果が利用されました。加熱のフェーズ中で、被覆が鉄筋にしっかり付着している部分は構造内部へ熱が伝導されるため冷たい状態を維持します。一方、剥離部分では、表面に加わる熱が内部へ伝わらず断熱効果により表面に留まるため、これらの箇所は周囲よりも暖かく見えます。

この手法により、剥離箇所を明確に特定することが可能となりました。

結果

以下は、本プロジェクトで取得された熱画像の一部です。これらの画像では、熱赤外線において温度が高く表示される剥離部分が強調されています。

放射画像には、青い矢印で示された箇所に検出された欠陥が記されています。

結論

今回の調査では、使用したサーモグラフィカメラの高い熱解像度により、コンクリート被覆の剥離部分を非常に鮮明に検出することができました。調査は標準レンズを用いて行われましたが、広角レンズも併用し、調査対象の外壁における熱異常を迅速に検出できるようにしました。

高い熱解像度と頻繁な画像取得を組み合わせたことで、広角レンズを使用した場合でも熱異常を確実に検出することが可能でした。この結果、調査の効率性と精度が大幅に向上しました。

Gx1シリーズの特徴

アクティブサーモグラフィは、建築分野で目に見えない欠陥を検出するのに非常に有用です。この検査技術を活用することで、潜在的な異常を事前に発見し、それが建物や人に被害を及ぼす前に対処することが可能です。さらに、早期対応により、問題箇所を特定して局所的に修復作業を行えるため、復旧コストを大幅に削減できます。

HIKMICROのサーモグラフィカメラは、高解像度と高い熱感度を備えており、この種の活動に最適です。本ケーススタディでは、G61モデルが調査目的において理想的なツールであることが証明されました。このモデルは、640×480の熱センサーと標準レンズを組み合わせることで、解像度と視野角のバランスが取れた状態で長距離からの外壁検査を迅速化しました。

また、必要に応じて追加の望遠レンズを使用することで、特に重要なエリアをより詳細に観察することができ、調査の精度をさらに高めることができました。これにより、Gx1シリーズの柔軟性と性能が建築分野での検査活動において大きな利点となることが示されました。