カテゴリー: サーモグラフィカメラを活用した太陽光パネルの点検
サーモグラフィは、広範囲でリモート検査が可能な技術で、リアルタイムで結果を得ることが可能です。この特性により、太陽光パネルの異常検出に長年利用されています。
サーモグラフィによる検査は、「 通常の運転条件下」「定期的な検査スケジュール中」「パネル清掃などの周期的な活動中」で可能です。
適切な機器の選択
良好な結果を得るためには、検査内容に応じた適切なサーモグラフィカメラを選ぶことが大切です。特に重要なのが、安全に作業できる距離を保つため、詳細な画像を取得する解像度です。検査対象から離れるほど、カメラにはより高いピクセル数と低いIFOV(即時視野角)が求められます。
IFOVとは?
IFOVは、ある距離での熱画像の単一ピクセルのサイズを示します。この値が小さいほど、詳細な画像が得られます。IFOVは通常、mrad(ミリラジアン)で表され、例えば1mradのカメラでは、1メートルの距離で1ピクセルが1mm四方のエリアをカバーします。
パフォーマンス計算を簡略化するツール
Hikmicroのウェブサイトで提供される無料の「Spot Size Calculator」ソフトウェアを使用すれば、特定の距離でのピクセルサイズや、必要な解像度を満たす最大距離を簡単に計算できます。太陽光パネルの検査では、各セルに最低5×5ピクセルが必要であることがIEC TS 62446-3で規定されています。
【実例】Hikmicro M20モデルの使用
例として、HikmicroのM20モデルを使用して一辺が15cmのセルを持つ太陽光パネルを検査する場合を考えます。
Spot Size Calculatorソフトウェアを利用し、以下の情報を入力します:
1.カメラモデル(必要ならレンズも選択)
2.測定スポットサイズ(5×5ピクセルで15cm×15cmセルをカバー)
この場合、計算結果は以下の通りです:
・最大作業距離:17.25m
・視野範囲(FOV):7.81m × 5.81m
このように、適切なツールを使用すれば、効率的で正確な検査が可能になります。サーモグラフィを活用することで、太陽光発電システムの安全性と効率を最大化し、長期的な性能を維持できます。
したがって、サーモグラフィカメラが各セルを最低でも5×5ピクセルでカバーできる最大距離内で作業する必要があります。
IEC 62446では、サーモグラフィカメラを使用した太陽光パネルの点検手順が定義されており、点検を実施するための気象条件も記載されています。また、サーモグラフィカメラの技術的特性についても記載されています(Hikmicroのサーモグラフィカメラはすべて、必要とされる最低限の特性を満たしています)。
太陽光パネル検査時の注意点
太陽光パネルを検査する際には、以下のポイントにご注意ください。
・太陽光の反射が熱画像に影響を与えないよう注意する
・検査時には、照度が600 W/m²以上であることを確認する
・強風は温度測定に影響を与える可能性があるため、28 km/hを超える風速では検査を行わない
・表面に付着した異物(例:鳥の糞)が誤検出を引き起こす可能性があるため、事前に清掃を行う
・検査はカメラの角度が30°以上(理想的には45°~85°)で行うと、精度が向上します。
・ガラスの放射率は通常0.85~0.90に設定する
これらのポイントを守ることで、より正確で信頼性の高い検査結果を得ることができます。
パネルで検出可能な主な欠陥
太陽光パネルで検出可能な欠陥は、以下のようなものがあります:
・開回路モジュール
・短絡したモジュール(結晶シリコン)
・前面ガラスが破損した結晶シリコンモジュール
・短絡したストリング(結晶シリコンおよび薄膜)
・接続不良のストリング(結晶シリコンおよび薄膜)
・単一セルの不良(結晶シリコン)
・高抵抗の接続ポイント
詳細およびさらなる情報については、IEC TS 62446-3を参照してください。